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[テストの重圧]
私は電気が得意だから良い。 でも他のクラスメイツは、転職の為に仕方なく受講している、今のところ、数学や電気理論は中学で習った基礎知識程度であるが、もし電気関係が好きでなかったら、随分勉強が苦痛となるであろう。
次のテストでは不合格者が数人出た。 その中にヘアードレッサーのマークがいた。 彼は、いつも口癖のように、「このコースは受講するだけで全員合格する」と、言っていた。 もしそれが本当なら、「外国人で、しかも英語のハンディがある私にとって、有難いな」と思った。
彼は以前、少しの期間だったが、シドニーのTAFEカレッジで、ヘアードレッサーの講師をしたと言う。 そこの校風がそうだったのかも知れないが、テスト前でも余り勉強をしていない様子だった。
テストの点数は、たいてい一解答が一点で、計三十問題だと二十六点で合格、計十一問題だと、九解答で合格の時もあり、百点満点に直すと、八十点以上となる。
一つの間違いが合格、不合格の分岐となり要注意である。 英語のハンディから私は、答案用紙をいつも三回見直した。 他の生徒は早く済まし、サッと教室から出て行く、私は何時も遅くなり、最終となったが、どの教官もそれを待っていてくれた。
テストは不合格になったら再テストが受けられる。 再テストが不合格になった場合、もう一度、再テストが受けられ、それでも駄目なら、もう一度だけ受けられる。 これで大抵の生徒はパスをする。 努力して勉強を続けるか、又は諦めて学校を去るかの選択を見ているようである。
教官はテストの採点をしてエンマ帳に記入する。 それから答案用紙を生徒に、一時的に返還され、解答合せをするのである。 珍しいことは、毎回、全生徒の前で、個々の点数を読み上げるのだ。 それで他の生徒にも、はっきりと合格、不合格が分ってしまう。
パスをし、声を出して喜ぶ人、またガッカリしている人、と表情は様々である。 でも欠点と採っても、そうショックではないらしく、ケロッとしている。
ダイアン担当のクラスでもテストがあった。 私は、てっきり満点を取ったと喜んでいた。 ところが、どういう訳か、このときに限って回答合せがない。 彼女に確かめると、三つも間違っていたと言う。 四つで不合格、非常に危なかった。
彼女は「日本人は英語力不足があるから」と言った。 「確かに、それはある。でも今回のテストは、そう高度な英語力を必要としなかった」と私は言い返した。 彼女の口ぶりから、私以外に日本人を担当した経験がありそうだった。
トムの成績が良くない。 ダイアンは彼の側に座り、付き切りで教えている。 しかし、どうもうまく理解出来ないようであった。
またビルは相変わらず、彼女と口喧嘩を繰返していた。 「僕は今までのテストはすべて合格している」と食って掛かった。 そう言われると、彼女は何も言えず、黙ってしまった。
次のテストでは優秀なマーカスが欠点を取った。 彼は非常にショッキングな顔をしていた。 ビルも今回初めて欠点を取り、他にも数名いた。 運良く私はギリギリでパスをした。 試験問題が難解となりパスするのが難しくなってきた。
トムは、もうクラスヘ顔を見せなくなってしまった。 ダイアン教官の努力も実らなかったようだ。
第十四週目に入った。 実技は、「工作機械」である。 旋盤とフライス盤は工業高校時代に使用したことがあった。 あれから、三十五年になるが、それらの機械は、ほとんどモデルチェンジはされていない。 この分野では、その必要がないのかも知れぬ。
前と同じ教官が現われた。 プログラムに書かれた名と違っている。 研修生はお互い顔を見合わせながら、嫌な表情をした。 彼は上部からの命令で、今回も担当すると告げた。
彼自身、研修生から嫌われていることを知っている。 私は彼の教育方針は間違っていないと思っている。 学力や技能の向上だけでなく、厳しさや規律も、教育の一環であって、人間は張詰めた緊張感がないと、脳細胞に旨くインプットしていかない。 テストも同じで、もしそれがなかったら、おそらく勉強はしないだろう。 工場内では、特に気の緩みが事故につながる。 若い人達は惰性に流され、気ままを言っているのである。
電気科だけの実習課目で、「コード、ケーブルの応用」は、ダイアンが担当した。 彼女は、この学校へ来る前は、電気業界の現場で仕事をしていた。 女性には珍しく配線工事が出来、作業中には何度も感電の経験をしたそうだ。
この実習では一人ずつ、ベニヤ板の上に、ケーブルと器具を取付け配線していく、私の得意とする作業である。 他の生徒は初めてで、やり方が分らず、もたもたしていた。 そして、私の側へやって来ては、そっくりコピーを始めた。
ビルは仕事が見付かったとの理由で、先週学校を辞めた。 優秀だったマーカスも、クラスに来なくなってしまった。 テストの欠点が、かなりショックだったらしい。 真面目な性格なので、余計に落込んでしまったようだ。 彼には、授業を続けるよう説得してやりたかったが、その方法が分らなかった。
これで電気の生徒は私を含め六人となってしまった。 それに、あと二人が出欠を繰返している。 彼等も、もうすぐ来なくなってしまうだろう。
この課目で、二度テストがあった。 配電工事に関してのマルチチョイスの問題で、私はなんとか欠点を逃れた。 キイウイのジェミニーだけが、満点を取った。
テーマ:オーストラリア
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